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新たな発掘映像でつづるNHK「新・映像の世紀」10月25日スタート
20年前に放送されたNHKのドキュメンタリー「NHKスペシャル 映像の世紀」の続編となる「新・映像の世紀」(総合、午後9時)が10月25日、スタートする。世界各地から集めた20世紀前半~現在の映像を編集し、約100年の歴史を全6回で振り返る。寺園慎一エグゼクティブプロデューサーは「過去に起きたことは現在につながっている。今を生きる上での“教訓”を導き出すことを心掛けた」と話している。(本間英士)
■番組中、9割が新たな映像で
「映像の世紀」はNHKが米ABCと共同取材したドキュメンタリー番組で、平成7~8年に放送された。フランスのリュミエール兄弟らが映像の撮影技術を確立した19世紀後半から20世紀後半までを、米国立公文書館など世界各地のアーカイブから集めた映像を用いて全11回で描いた。
特徴は、日本のドキュメンタリーではそれまで「補足資料」に過ぎなかった映像資料をつなぎ合わせ、番組を構成した点だ。これに、著名人や無名の兵士ら同時代を生きたさまざまな立場の人々の手記を組み合わせて歴史を描く手法が、高い評価を集め、インターネットでは「伝説のドキュメンタリー」の愛称も。これまで何度も再放送され、集められた映像はNHKの他番組で300回以上も再利用されている。
前作の放送から約20年を経て、「新・映像の世紀」を制作する一つのきっかけが「映像の使用権」だった。かつて調達した映像の使用権が今年末に切れるため、NHKは平成25年から海外の各アーカイブと使用権更新の交渉を実施。その結果、世界約70のアーカイブから調達した1万2千以上のクリップを今作で使用している。
NHKによると、20年前と比べ、現在は世界各地のアーカイブの整備と情報公開が進み、未公開映像が続々と“発掘”されているという。今作の場合、番組全体の約9割を新映像で構成する計算となる。映像はNHKがデジタル処理し、画像や音質を大幅に改善。テーマ曲の「パリは燃えているか」(加古隆氏作曲)も新規に録音され、番組内の印象的な場面で流される。語りは俳優の山田孝之が務める。
■英国“三枚舌外交”の内幕
前作は主に歴史の「表舞台」を描いたのに対し、今作では歴史を動かした主役や脇役たちの人間ドラマを描き、歴史に切り込む。
例えば、第一次世界大戦を扱った第1集では、「アラビアのロレンス」と呼ばれる英国人情報将校、トーマス・ロレンスをテーマに、大戦の裏側で暗躍した英国の“三枚舌外交”の内幕を描写する。また、毒ガスを開発したドイツの科学者、フリッツ・ハーバーの“悲劇”も描く。
貴志謙介シニアディレクターは「昨年は第一次世界大戦から100年の節目で、欧米が新たに発掘した過去の映像を今作でも多く使用している。また、『ポグロム』(ユダヤ人への迫害や虐殺)を記録した映像や(ソ連の指導者)ウラジーミル・レーニンの肉声など非常に珍しい資料を盛り込んだ」と語る。
1920年代の米国を扱った第2集では、石油王・ロックフェラー家のプライベート映像などを用い、第一次大戦後、いかにして「企業帝国」が出現し、現代の資本主義の原型が生み出されたのかを考える。第3集ではドイツの独裁者、アドルフ・ヒトラーを愛人のエヴァ・ブラウンが撮影したプライベート映像を口切りに、なぜ、世界中の企業がナチスへの支援を行い、独裁者を迎え入れてしまったのかを描く。
このほか、「東西冷戦」を扱った第4集では、第二次世界大戦後からベトナム戦争までを振り返る。第5集は50年代後半から冷戦構造の崩壊まで。アルゼンチン生まれの革命家、チェ・ゲバラのゲリラ活動や米国での反戦運動など「若者たちの反乱」を描く。
第6集は90年代後半から現在までを扱う。「映像の世紀」の放送後も映像技術はさらに進化し、現在は携帯電話やスマートフォンで個人が動画を撮影し、アップできる時代になった。2010年代初頭の中東民主化運動「アラブの春」では、チュニジアなどの市民がデモの様子をユーチューブなどの動画サイトに投稿したり、リアルタイムで配信したりした。
寺園さんは「21世紀こそが本当の『映像の世紀』。その意味でも、今後も『映像の世紀』というシリーズを作ることはできるのではないか」と話している。