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2024年10月31日
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持ち歩きデバイスを減らしてTKCはどう変わったか?

2016年01月31日


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 全国の税理士・会計士をサポートするTKCは、2015年に営業や営業企画、部門長を対象に1162台のiPhoneを導入した。これによって業務スタイルを大きく変わったという。iPhone導入とそれに伴う変化について聞いた。

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●シャドーIT対策が課題に

 iPhoneを導入する以前、営業担当者は個人の携帯電話、会社支給のモバイルPCとモバイルWi-Fiルータを持ち歩いていた外出先での業務をこなしていたという。iPhoneの導入は、個人の携帯電話とモバイルWi-Fiルータを一本化するのが狙いだ。

 従前のモバイル環境になったのは2013年春頃のこと。営業担当者は業務での通話も個人端末で行い、業務に関する通話料は明細から会社に請求する仕組みだった。この作業が煩雑で担当者の負担になっていたことから、モバイルWi-FiルータとIP電話を導入。モバイルPCでのインターネット接続と携帯電話からの業務の通話はモバイルWi-Fiルータを経由させることで、通信料を会社に一本化するようにしていた。

 ただ、IP電話での通話はモバイルWi-Fiルータの電波環境が芳しくない場所で通話品質が低下してしまい、営業担当者も通常の通話操作とIP電話による通話操作を都度切り替えなければならないなどの課題があった。これに加え、「営業担当者が自前でさまざまコミュニケーションツールを使ってしまい、会社が管理できない『シャドーIT』の問題もありました」(経営本部システムエンジニアリングセンター IT投資企画部長の金森直樹氏)という。

 こうした中、2015年春にSIMロック解除など携帯電話に関する制度変更が行われたことを契機に、会社支給でスマートフォンを導入する検討を開始した。スマートフォン1台で通話とモバイルPCでのインターネット通信(テザリング使用)をまかなうことにより、上述の課題の解決を目指した。

 機種選定は、アプリケーションや端末の管理、制御のしやすさを理由にiPhone 6シリーズに決定。キャリアはソフトバンクを選択したが、MDMはキャリアフリーで端末の盗難・紛失などに対応できるアイキューブドシステムズの「CLOMO」サービスを導入した。

 端末のセキュリティについて同社は、72時間以上稼働が認められない場合に「紛失」扱いとするポリシーを定めており、72時間を超えると自動的に端末を初期化させる。また、夜間時の紛失対応などでは社員でも端末のロックや初期化でき、IT担当者にも通知される仕組みを講じた。

 iPhone導入に合わせてIT投資企画部は、機器の利用申請や利用状況などを確認できる管理システムも自前で開発。通話先や通話時間、料金などの利用状況を時間帯、休日、夜間、通話1回あたり1000円以上といった条件からすぐに確認できるようにして、社員や上長が容易に管理できるようにもしている。

●導入決定から1カ月でスタート

 iPhoneの導入を決定したのは2015年6月のこと。翌7月から社員への支給と利用を開始する。わずか1カ月という速さが可能だったのは、(1)VPNの再構築が不要、(2)社員のセルフキッティング文化――の2つがあったからだった。

 「従来のモバイルWi-Fiルータからの通信はVPNを経由させていましたが、iPhoneに移行してもそのままVPN基盤を利用できるので端末側の作業に集中できました」と金森氏。VPNにはiPhoneに証明書をインストールして端末認証で接続するようにしている。

 また、社員によるセルフキッティングはPCから行っており、iPhone導入でも同じく実施している。社員が円滑に作業できるようIT投資企画部ではマニュアルビデオを作成したり、全国各地の拠点とビデオ会議で講習会を開催したりしてきた。2015年12月から現場でのワークショップも始めた。

 「既に個人でスマートフォンを使っている社員も多く、スマートフォン自体への抵抗感は少ないようでした。ただしAndroidとiPhoneでは操作方法が大きく異なりますので、iPhoneの操作に慣れてもらう方法を工夫したり、セキュリティ強化のために会社支給のスマートフォンに切り替えることを説明したりすることに注力しました」(IT投資企画部課長代理の市川裕洋氏)

 iPhoneへの移行に対して、社員から直接的な評価は少ないものの、「便利になった」といった声が寄せられているという。「ITに対する不満の声は挙がりやすいのですが、iPhoneを使いたくないといったようなコメントは聞かれませんので、概ね順調なのかもしれませんね(笑)」(金森氏)

 iPhone導入は社員の働き方にも確実な変化をもたらしつつある。

●情報を共有する文化に

 TKCではiPhoneとは別に、2014年9月にマイクロソフトのクラウドサービス「Office 365」を導入していた。iPhone導入によってOffice 365の利活用が本格化し、社員のワークスタイルが大きく変化した。

 例えば、IT投資企画部がiPhone導入のために作成したマニュアルビデオは、クラウドストレージのOneDriveにアップされ、全国の社員がどこからでも視聴できるようにしている。ビデオは複数あり、OneDrive上では再生回数などからおすすめのビデオが分かるため、社員がどのビデオを見れば作業しやすいのかが一目瞭然だ。そこから、OneDriveで情報を共有するメリットが社内に浸透し始め、各部署からも積極的に情報のアップと共有がなされるようになったという。

 「従来はメールにファイルを添付して共有していましたが、PCからでも、スマートフォンからでもOneDriveにアクセスして必要な情報を確認できるようになり、『共有する』という方法が大きく変わりました」(金森氏)

 メールについても、従来のモバイルWi-Fiルータの環境では都度PCを起動しなければならなかったが、iPhoneではすぐに閲覧したり送信したりできるようになった。スマートフォンとクラウドサービスの組み合わせによって、ビジネススピードの向上と情報共有の促進というメリットが実現した格好だ。

 金森氏によれば、個人の携帯電話から会社支給のiPhoneに切り替えることによるコスト増はあるものの、社員のワークスタイル変化と業務効率の向上というメリットに十分に値する投資だと語る。今後はiPhoneの利活用を促進していくフォローアップ研修を実施し、導入先部門の拡大も検討していく予定だという。